地震解析の第2回では陸側のプレートに海側のプレートが沈み込む境界で発生する「海溝型地震」について、過去起きた大地震のデータから前兆がないか(予測可能か)検証してみようと思います。
海溝型地震の例としては、関東大震災・東日本大震災・スマトラ沖地震・十勝沖地震などです。また、近いうちに発生が予測されている南海トラフ地震も海溝型地震として発生する見込みだそうです。
阪神淡路大震災や熊本地震、大阪北部地震などが活断層型地震の例です。
比較対象は前回も紹介した、昨年の今頃の3か月間のデータです。昨年はそこまで大きな地震がなかったと思うので、これを「平時」として比較のベースラインにしようと思います。
色がオレンジ&サイズが大きいものがマグニチュードの大きな地震、色が青&サイズが小さいものがマグニチュードの小さな地震を示します。南米や東南アジア近辺で大きな地震が起きていますが、日本近海は穏やかなように見えます。
十勝沖地震の場合は、世界的な地震活動は起きていないものの、震源となった十勝沖では複数回マグニチュードの大きな地震が発生していました。十勝沖地震も前兆があったと言えそうです。
100年前なのでデータは少ないものの、世界的に地震活動が活発&日本でも前震がありますね。前兆があった言えそうです。
ただ、やはりデータが少ないのが残念です。おそらく当時の観測技術的にある程度の規模の地震でなければ観測できなかったものと思われます。何か補完できる情報はないかと思い、前回使い勝手が悪いからと採用を見送った気象庁の「震度データベース」のデータを見たところ、1920年代のデータもあったので、それを加えてマッピングしてみました。
大震災発生前に関東の太平洋側で地震活動が活発であったことを示すマップになった気がします。関東大震災も前兆があったと言えそうです。あと、気になるのは南九州の地震活動です。九州は地震が少ないというイメージですが、あまり油断できないのかもしれません。
ただ、スマトラ沖地震の震央であるスマトラ島北西部(上の地図の左端の細長い島)ではポツポツ地震があるものの、目立って大きなものはなさそうです。嵐の前の静けさですかね。
すごい。。東日本大震災の時同様、環太平洋地域全体で地震活動が活発になっています。
前回の振り返りと今回の取り組み
「最近地震多くない?」というアバウトな直感で始めたのですが、世界的にはそこまでマグニチュードの大きな地震は起きていなさそうでした。なので、過去起こった大地震について、それが発生する前の地震の発生状況(≒ぱっと見でわかる前兆があるのか)を検証してみたいと思います。海溝型地震と活断層型地震
地震については素人なので、データを集める前にざっくり概要を学びました。地震はその発生メカニズム的に海溝型地震と活断層型地震の2種類があるそうです。海溝型地震
海溝型地震は陸側のプレートと海側のプレートの境界である海溝やトラフ付近で発生する地震です。海溝型地震には、プレートの境界での断層運動により発生するプレート境界(プレート間)地震と、海側のプレート内部での断層運動により発生するプレート内地震があります。海溝型地震の例としては、関東大震災・東日本大震災・スマトラ沖地震・十勝沖地震などです。また、近いうちに発生が予測されている南海トラフ地震も海溝型地震として発生する見込みだそうです。
活断層型地震
活断層型地震は陸側のプレート内部での断層運動により発生する地震です。深さがおおむね30kmよりも浅い地殻の内部で発生するため、地殻内地震とも呼ばれます。活断層で発生する地震だけでなく、活断層が認められていない陸域および沿岸域で発生する浅い地震も含まれます。そのため、前兆がないなど予測しづらい点が特徴です。阪神淡路大震災や熊本地震、大阪北部地震などが活断層型地震の例です。
参考にしたサイト
国立の防災科学技術研究所の「地震ハザードステーション」とWikipediaの情報を参考にしました。
データで見る海溝型地震発生前夜
プレート境界で発生する海溝型地震は日本だけでなく、東南アジアや南米でも大きな地震を多く発生させています。前回見つけたアメリカの地質調査所(USGS)のオープンデータを使って大地震が発生する直前3か月(地震発生日の前日から3か月)のデータをTableauで見える化してみようと思います。比較対象は前回も紹介した、昨年の今頃の3か月間のデータです。昨年はそこまで大きな地震がなかったと思うので、これを「平時」として比較のベースラインにしようと思います。
色がオレンジ&サイズが大きいものがマグニチュードの大きな地震、色が青&サイズが小さいものがマグニチュードの小さな地震を示します。南米や東南アジア近辺で大きな地震が起きていますが、日本近海は穏やかなように見えます。
過去の海溝型地震:日本
東日本大震災(2011.3.11)
東日本大震災が起こった2011.3.11の直前3か月(2010.12.11~2011.3.10)の地震の発生状況です。
すごいですね。。日本近海はもとより、南米やインドネシア近辺・ニュージーランド当たりの南太平洋でもマグニチュードの大きな地震が多く起こっています(ニュージーランド付近の大きな奴は東日本大震災の直前に起こったクライストチャーチの大地震です)。
日本周辺に絞っても、東北地方の太平洋側で大きな地震が起きています。東日本大震災は前兆のあった大地震と言えそうです。ただし、世界的に地震活動が活発だったのでどこで大地震が起きても不思議ではなかった(プレートの強度・エネルギーの蓄積度合い的にたまたま日本で起こった)とも言えるかもしれません。十勝沖地震(2003.9,26)
次は2003年の十勝沖地震について、直前3か月の状況を調べてみました。十勝沖地震の場合は、世界的な地震活動は起きていないものの、震源となった十勝沖では複数回マグニチュードの大きな地震が発生していました。十勝沖地震も前兆があったと言えそうです。
関東大震災(1923.9.1)
時間は大きく遡りますが、関東大震災も海溝型地震だったそうです。100年近く前ですがアメリカ地質調査所のサイトにデータがあった(!)ので見える化してみます。100年前なのでデータは少ないものの、世界的に地震活動が活発&日本でも前震がありますね。前兆があった言えそうです。
ただ、やはりデータが少ないのが残念です。おそらく当時の観測技術的にある程度の規模の地震でなければ観測できなかったものと思われます。何か補完できる情報はないかと思い、前回使い勝手が悪いからと採用を見送った気象庁の「震度データベース」のデータを見たところ、1920年代のデータもあったので、それを加えてマッピングしてみました。
大震災発生前に関東の太平洋側で地震活動が活発であったことを示すマップになった気がします。関東大震災も前兆があったと言えそうです。あと、気になるのは南九州の地震活動です。九州は地震が少ないというイメージですが、あまり油断できないのかもしれません。
過去の海溝型地震:東南アジア
スマトラ沖地震(2004.12.26)
お次は東南アジアです。インドネシアのスマトラ島沖では過去何度も大規模な地震が起きています。なかでも規模が大きかったのが2004年12月のM9.1の大地震です。大津波が発生し、東南アジア諸国に被害が出たことでも知られています。
これはわかりやすいですね。台湾からニュージーランドにつながる太平洋南部の地震活動が活発になっています。インドネシア近辺でも地震活動が活発ですね。ただ、スマトラ沖地震の震央であるスマトラ島北西部(上の地図の左端の細長い島)ではポツポツ地震があるものの、目立って大きなものはなさそうです。嵐の前の静けさですかね。
過去の海溝型地震:南米
チリ イキケ地震(2014.4.1)
日本の反対側のチリでは日本同様、大規模な海溝型地震が多数発生しています。2014年のイキケ地震はM8.2の地震でした。
チリの沖合でも複数回マグニチュードの大きな地震が起きており、前兆があったと言えそうです。ただ、世界的に地震活動が活発だったので「どこで起きてもおかしくなかった」という感じもします。
チリ イヤペル地震(2015.9.16)
お次もチリで起きたM8.3の大地震です。
これはわかりやすい気がします。地震が起きる直前3か月に前兆のような地震が起きています。
メキシコ チアパス地震
最後は2017年にメキシコ南部で発生したM8.2の地震です。
これもわかりやすいですね。震源地付近で直前に2発大きな地震がありました。
海溝型地震のまとめ
歴史的に規模(マグニチュード)の大きかった海溝型地震について、本震が発生した当日を除く直前3か月間の地震発生状況を見てきました。全体を通して分かった大きな特徴は以下の2点かなと思います。
- 大きな地震が起きる直前には、その地域で前兆となる比較的規模の大きな地震が複数回起きていることが多い。
- 環太平洋全体的に地震活動が活発な時はどこで大地震が起きてもおかしくない。
海溝型地震については、ある程度前兆めいたものがありそうです。なので、最終的には現時点のデータから将来地震が起こるかの確率予測的なものができるといいなと思っています(前兆があるのであれば、今のデータから将来が予測できるのではないかと思います。僕の技術でできるかは怪しげですが、過去の地震が起きる前のデータから地震が発生するかを予測するモデルを作って、それに”今”のデータを放り込んだら何とかならないかなと思っています)。
次回は予測が難しいと言われる「活断層型地震」について、同様に過去のデータを分析してみようと思います。