みずほの前身である富士銀行の頭取まで上り詰めた務めた橋本徹さんの目を通した銀行60年史。伝記っぽい感じ。

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そりゃデジャブ感あるわけだわ。手当たり次第節操なく本を読んでいるとたまにこうゆうことがあるのです。個人的には本書よりも、”ドキュメント銀行”の方が面白かったかな。
ただし、あくまで個人の好みなので、小説仕立ての本の方が好みの方は本書”実録・銀行”の方が好きかも。
企業が大きく成長していくのに合わせて銀行も貸出金と預金の金利差で儲ける利鞘ビジネスで成長していきます。経済成長フェーズでは資金需要が潤沢なので、お金を右から左に流していれば銀行は儲かったのです。監督官庁である大蔵省は金融システムの安定性を重視し、横並びになるような規制・介入をしました。いわゆる護送船団方式というものです。高度成長に銀行マターで水を差さないようにするという意味では護送船団方式は時代に合っていたものと思います。
国民の経済水準が上がったため、銀行に集まる預金は増えた一方、高度成長の終焉に伴い企業の資金需要は急減しました。これまで銀行は預金を貸出に回す利鞘ビジネスで黙っていても収益が上がっていましたが、貸出がしぼんだことで資金がだぶつきます。銀行が収益を上げるためにとった手は、貸出の強化と投資・運用の強化でした。
銀行の主要ビジネスは貸出であったため、まずは貸出での収益確保を目指しました。とは言え、資金需要が少ないので、競合行との金利競争になります。また、貸倒リスクの高い企業にも積極的に貸出を行い、貸出量を確保しようとしました。無理のある貸出の多くが、バブル崩壊によって不良債権となります。本書では、富士銀行が無理な融資を強行し、多額の不良債権を抱えるさまが描かれています。戦後一貫して預金量トップだった富士銀行は、第一銀行と勧業銀行が統合した第一勧銀の誕生によりトップの座を明け渡しましたが、トップの座を奪還するために無理な融資を繰り返したそうです。
貸出だけでは金利競争になり、十分な収益が期待できないため、だぶついた資金は株式・不動産市場に流れ込みました。これが不動産バブルのきっかけとなります。
バブル崩壊により回収できない貸出が多発し、多額の不良債権が発生しました。経営危機に陥った金融機関は大蔵省主導の吸収合併で再編されていきました。また、金融機関が合同で設立した住専(住宅専門金融会社)のバブル崩壊へのダメージが大きく、住専が倒れると住専に融資している金融機関への影響が懸念されたため、結果として公的資金が注入されました。本書では住専救済の負担をめぐる銀行と農協系金融機関の確執が描かれています。
1990年代になると、欧米の金融機関は合併・買収によるユニバーサルバンク化(金融コングロマリット化)を進めました。このトレンドを見て邦銀にも統合の機運が高まり、富士銀行・第一勧銀・安田信託による信託業務の統合を呼び水に、金融機関の合従連衡が加速しました。規模拡大による規模の経済を追求した結果として、現在の3メガを中心とする体制に収れんしていきました。
新聞などで都心を中心に不動産価格が高騰していることが報道されていることを踏まえると、プチバブル進行中であると考えられます。最近、埼玉の実家マンションの一室が、当時両親が新築で買った値段と近しい価格で売りに出ていました。当時と物価水準が異なることやフルリフォームの費用が掛かっていることを考えると単純比較はできないものの、”35年前とほぼ同じ値段で売られている”というのはかなり強烈ですよね。
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本書の簡単な紹介
”トップバンカーが見た興亡の60年史”のサブタイトルにあるように、みずほ銀行の母体となった富士銀行の橋本徹さんを通して戦後以降の日本の銀行の歴史を描いた本です。主人公を中心に進むので小説的な感じでもあります。似た内容でドキュメントタッチの本もあります
読んでいて、ところどころ聞いたことのあるようなエピソードが多いなぁと思ったら、読んでいましたよ同じ著者の本。それも最近。そりゃデジャブ感あるわけだわ。手当たり次第節操なく本を読んでいるとたまにこうゆうことがあるのです。個人的には本書よりも、”ドキュメント銀行”の方が面白かったかな。
この20年間で大きく統廃合が進んだ銀行業態の歴史を紐解いた本。その時々のキーマンの視点で物語が進むので面白い&生々しいし、複雑な統廃合の流れがだいたいわかるのです。
ただし、あくまで個人の好みなので、小説仕立ての本の方が好みの方は本書”実録・銀行”の方が好きかも。
ざっくり戦後金融史を概観すると
戦後~高度成長
1950年に朝鮮戦争勃発すると、アメリカは日本を前線基地と位置づけ物資の調達源にしようとしました。この朝鮮特需が戦後日本復興の足掛かりであり、60年代の高度成長期のきっかけになります。戦後復興という文脈なので、内需主導型の経済成長でした。企業が大きく成長していくのに合わせて銀行も貸出金と預金の金利差で儲ける利鞘ビジネスで成長していきます。経済成長フェーズでは資金需要が潤沢なので、お金を右から左に流していれば銀行は儲かったのです。監督官庁である大蔵省は金融システムの安定性を重視し、横並びになるような規制・介入をしました。いわゆる護送船団方式というものです。高度成長に銀行マターで水を差さないようにするという意味では護送船団方式は時代に合っていたものと思います。
高度成長終焉~バブル形成
1970年代初頭の第四次中東戦争を契機とするオイルショックにより石油価格が高騰したことで生産停止する工場が出るなど、日本経済は大きな打撃を受けました。街中からトイレットペーパーがなくなったなど、消費生活にも大きな影響が出ました。結果として高度成長は終焉を迎え、低成長時代に突入しました。国民の経済水準が上がったため、銀行に集まる預金は増えた一方、高度成長の終焉に伴い企業の資金需要は急減しました。これまで銀行は預金を貸出に回す利鞘ビジネスで黙っていても収益が上がっていましたが、貸出がしぼんだことで資金がだぶつきます。銀行が収益を上げるためにとった手は、貸出の強化と投資・運用の強化でした。
銀行の主要ビジネスは貸出であったため、まずは貸出での収益確保を目指しました。とは言え、資金需要が少ないので、競合行との金利競争になります。また、貸倒リスクの高い企業にも積極的に貸出を行い、貸出量を確保しようとしました。無理のある貸出の多くが、バブル崩壊によって不良債権となります。本書では、富士銀行が無理な融資を強行し、多額の不良債権を抱えるさまが描かれています。戦後一貫して預金量トップだった富士銀行は、第一銀行と勧業銀行が統合した第一勧銀の誕生によりトップの座を明け渡しましたが、トップの座を奪還するために無理な融資を繰り返したそうです。
貸出だけでは金利競争になり、十分な収益が期待できないため、だぶついた資金は株式・不動産市場に流れ込みました。これが不動産バブルのきっかけとなります。
バブル崩壊~銀行の合従連衡
その後不動産価格が高騰し、バブルが加速しました。過度なインフレを危惧した政府・日銀が不動産融資総量規制(銀行の不動産融資への規制)・公定歩合引き上げを行います。結果として不動産価格は下落に向かったもののショックが大きすぎ、バブルの崩壊・不況へつながります。バブル崩壊により回収できない貸出が多発し、多額の不良債権が発生しました。経営危機に陥った金融機関は大蔵省主導の吸収合併で再編されていきました。また、金融機関が合同で設立した住専(住宅専門金融会社)のバブル崩壊へのダメージが大きく、住専が倒れると住専に融資している金融機関への影響が懸念されたため、結果として公的資金が注入されました。本書では住専救済の負担をめぐる銀行と農協系金融機関の確執が描かれています。
1990年代になると、欧米の金融機関は合併・買収によるユニバーサルバンク化(金融コングロマリット化)を進めました。このトレンドを見て邦銀にも統合の機運が高まり、富士銀行・第一勧銀・安田信託による信託業務の統合を呼び水に、金融機関の合従連衡が加速しました。規模拡大による規模の経済を追求した結果として、現在の3メガを中心とする体制に収れんしていきました。
歴史は繰り返すのか?
GDPの成長率が1%台の現代はバブル前の低成長時代に似ているような気がしています。金融機関の預貸率は低下の一途をたどっており、資金がだぶついていることを示しています。預貸率とは金融機関が集めた預金が貸出に回っている割合であり、資金のだぶつき(預金の増加・貸出金の低下)によって預貸率は低下します。新聞などで都心を中心に不動産価格が高騰していることが報道されていることを踏まえると、プチバブル進行中であると考えられます。最近、埼玉の実家マンションの一室が、当時両親が新築で買った値段と近しい価格で売りに出ていました。当時と物価水準が異なることやフルリフォームの費用が掛かっていることを考えると単純比較はできないものの、”35年前とほぼ同じ値段で売られている”というのはかなり強烈ですよね。
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ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日 : 2018-02-25
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