フォルクスワーゲンの歴史と排ガス不正への道のり。当時あまりちゃんとニュースをフォローしていなかったのだけど、かなりえげつないことをやっていたのです。
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結果としてトップダウンの強権的な社風が蔓延するとともに、ピエヒに気に入られたイエスマンが幹部として昇格し彼らもピエヒのスタイルを模倣したことで、硬直的・強権的な社風が企業文化として定着していったのだそうです。軍隊に近しいような感じなんだったんだろうと思います。その中で頭角を現したのが排ガス不正時のCEOであったマルティン・ヴィンターコルンでした。
ちなみに、当初フォルクスワーゲンが十分な研究開発費を投じていなかったのではないかという仮説を立てたのですが、不正発覚前の2012年から直近まで世界でもトップクラスの研究開発費を毎年計上していたことが分かったので、この仮説は棄却されました。むしろ、それだけ費用を投じても不正に手を染めざるを得なかったということは、誰もデスマーチを止められない硬直化した企業文化の表れのような気がするのです。
【2012年の研究開発費ランキング】
【2017年の研究開発費ランキング】
フォルクスワーゲンのディーゼル車はガソリン価格が高く、規制の緩いヨーロッパでは大きな成功を収めていました。ただし、ガソリンとディーゼルの燃料価格の差がほぼない上に、規制がヨーロッパの倍厳しいアメリカ市場開拓をディーゼル車に託した点に無理があったように思います。「クリーン・ディーゼル」という環境性を訴求して参入したものの、排ガス不正が露見した点が致命傷だったと思います。とは言え、不正があったにもかかわらず直近の売上台数では世界トップを奪還しており、底堅さを感じます。
東芝も同様にRed oceanであるPC事業や、中韓台の追い上げを受ける半導体事業で不正が行われてきました。PCや半導体はかつての稼ぎ頭・花形部門であり、成功体験から主要プロダクトの新陳代謝が進まなかったものと思います。
一方、アップルは社名を「アップルコンピュータ」から「アップル」に変えたことに象徴されるように、特定の製品に執着せず、主要プロダクトを次々と変えていけたことが違いだと思います。Apple TVなど、事業的には失敗に終わったものもありましたが、コンスタントにホームランを打っているのがすごいのです。
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なぜフォルクスワーゲンの排ガス不正が起こったのか?
強権的な社風・企業文化
ポルシェ創業家のフェルディナント・ピエヒが長きにわたりフォルクスワーゲンの経営の実権を握っていました。自身は優れたエンジニア・デザイナーであった一方で、社員に求める要求水準が高く、些細なミスや目標未達に対して容赦なく社員を解雇するという冷酷さもありました。結果としてトップダウンの強権的な社風が蔓延するとともに、ピエヒに気に入られたイエスマンが幹部として昇格し彼らもピエヒのスタイルを模倣したことで、硬直的・強権的な社風が企業文化として定着していったのだそうです。軍隊に近しいような感じなんだったんだろうと思います。その中で頭角を現したのが排ガス不正時のCEOであったマルティン・ヴィンターコルンでした。
ディーゼルエンジンを差別化要素に
ディーゼル車はガソリン車よりも燃料効率が15%も高く、二酸化炭素排出力が少ないという点が長所なのです。ガソリン価格がディーゼルの4倍であるヨーロッパではディーゼルエンジンは大きな訴求力を持ち、2002年に西ヨーロッパで新車登録された車の40%がディーゼル車だったそうです。一方で、ディーゼルエンジンはガソリンよりも高温で発火するためはるかに多くの窒素酸化物を排出するという欠点があり、排ガス中の窒素酸化物を除去する技術が必須でした。
ヨーロッパや中国では大きなシェアを持っていたフォルクスワーゲンでしたが、世界一を達成するにはアメリカ市場の開拓が必須でした。アメリカではガソリンとディーゼルの価格差があまりないため、「クリーン・ディーゼル」としてエコを訴求する戦略をとりました。しかしながら、排ガスを浄化する技術の開発に手間取ります。
意図的な不正
排ガス浄化技術の開発が難航するなか、新モデルの販売開始が近づきます。達成困難なプロジェクトにおいて、上記で記載したフォルクスワーゲンの社風・企業文化が掛け合わされることで意図的な不正につながりました。ざっくり言うと「排ガス検査を行うテスト環境で”のみ”ちゃんと動いているように見せかける”デバイスを搭載することにした」ということです。フォルクス・ワーゲンは生産効率を上げるために複数の車種で部品を共通化する「プラットフォーム戦略」をとっていました。共通化の負の側面として、不正デバイスはフォルクスワーゲン車だけでなく、アウディ・ポルシェなどにも組み込まれることになりました。組織ぐるみで不正に手を染めたというのと、不正を抑止する内部統制が全く機能しなかったというのが驚きなのです。かなり悪質なことをやっているので、興味のある方は是非本書を見てみてください。フォルクスワーゲンだけの問題か?
東芝
トップからの苛烈な要求に耐えられなくなった現場が不正に手を染め、それが常態化したという点で言えば、度を超えた”チャレンジ”を強要した東芝とよく似ているように思います。硬直的・強権的な社風・企業文化が不正を生んだところがそっくりに感じます。アップル
絶対的なトップが製品に対して一切妥協をしないという点で言えば、ジョブズが率いていた頃のアップルと似ているように思います。(僕が知っている限りですが)ジョブズと開発チームの間に様々な軋轢があったというのは聞いたことがありますが、対外的な不祥事や不正はなかったように思います。一線を超える/超えないの違いはなんだろう?
度は違うにしろ&サンプル数は少ないけど、フォルクスワーゲン・東芝・アップル共に中央集権的な組織で強権的なトップがいたという点では似ています。ということで、どこに差があるのか考えてみようと思います。企業文化の違い
シリコンバレーにあるアップルは土地柄もあり、オープン・イノベーティブな文化であり、これがアップルが不正の一線を超えることのなかった理由の1つと考えます。アップルの場合、競合がひしめく採算の取れづらいプロダクトで戦うことにこだわらず、Mac→iPod→iPhone→iPadと自社を絶えずReinventionできた点がフォルクスワーゲンなどとの差であり、文化の違いに起因しているのではないかと思います。ちなみに、当初フォルクスワーゲンが十分な研究開発費を投じていなかったのではないかという仮説を立てたのですが、不正発覚前の2012年から直近まで世界でもトップクラスの研究開発費を毎年計上していたことが分かったので、この仮説は棄却されました。むしろ、それだけ費用を投じても不正に手を染めざるを得なかったということは、誰もデスマーチを止められない硬直化した企業文化の表れのような気がするのです。
【2012年の研究開発費ランキング】
【2017年の研究開発費ランキング】
主要プロダクトへの依存
フォルクスワーゲン・東芝ともに特定の主力製品の依存度が高かったことが不正を招いたと考えられるような気がします。フォルクスワーゲンのディーゼル車はガソリン価格が高く、規制の緩いヨーロッパでは大きな成功を収めていました。ただし、ガソリンとディーゼルの燃料価格の差がほぼない上に、規制がヨーロッパの倍厳しいアメリカ市場開拓をディーゼル車に託した点に無理があったように思います。「クリーン・ディーゼル」という環境性を訴求して参入したものの、排ガス不正が露見した点が致命傷だったと思います。とは言え、不正があったにもかかわらず直近の売上台数では世界トップを奪還しており、底堅さを感じます。
東芝も同様にRed oceanであるPC事業や、中韓台の追い上げを受ける半導体事業で不正が行われてきました。PCや半導体はかつての稼ぎ頭・花形部門であり、成功体験から主要プロダクトの新陳代謝が進まなかったものと思います。
一方、アップルは社名を「アップルコンピュータ」から「アップル」に変えたことに象徴されるように、特定の製品に執着せず、主要プロダクトを次々と変えていけたことが違いだと思います。Apple TVなど、事業的には失敗に終わったものもありましたが、コンスタントにホームランを打っているのがすごいのです。
主要プロダクトの生産プロセス
iPhoneの裏に「Designed by Apple in California, Assembled in China」と書かれているように、アップルが自社で行っているのは主に設計までで、生産は外部に委託しています。一方で、フォルクスワーゲンや東芝は様々なサプライヤーを使って最終製品を自社で製造しています。アップルのように特定の生産プロセスに特化した方が、責任範囲を限定して自社のリソースを集中して投下できるため、品質向上とリスク低減を両立できるのだと思います。ざっくりまとめると
以上、かなり独断と偏見で買いてしまいましたが、一番の違いは「社風・企業文化」なのだろうと思います。オープンな企業文化故に、特定の製品に過度に依存しない・採算が悪くなった製品を捨てるという製品戦略が立てられるのでしょうし、最適な生産戦略が立てられるのだと思います。そういう点では、オープンな企業文化というのは、無形であるがゆえに模倣困難な強力な競争優位性なのだと思いました。↓気になったらここからポチっと↓