マレーシアを知る第二弾。マレーシアは土着のマレー人に加え、イギリス植民地時代にイギリスが連れてきた中国系・インド系からなる多民族国家なのです。数的には優位だが、経済的に中華系に劣るマレー人の地位向上という課題を克服し、「統合されたマレーシア(バンサ・マレーシア)」を作っていくことの難しさがよくわかるのです。

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この本を読むとわかること
民族とナショナリズム
- 1991年にマハティール首相が発表した「2020年構想」という壮大なプロジェクト
- 独自のやり方で産業国家を目指すための9つの課題
- バンサ・マレーシア(統合されたマレーシア国民)を作るというビジョン
- 多民族国家であるマレーシアに求められる国家建設という困難な事業
- 多民族を許容しながら同時に全民族をまとめる国を作る
- ブミプトラ(マレー系)5割・非ブミプトラ(中華系・インド系)5割という微妙なバランス関係
- バンサ・マレーシアの課題
- 民族のアイデンティティと、国としてのアイデンティティ
- 独立後に与党となった統一マレーシア人民国民組織(UMNO)によるマレー系優遇政治
- 人種・国民・自民族中心主義の定義
- Race:肌の色などの身体的特徴
- Nation:国民、時として主権国家(State)
- Communalism
- 異なる共同体のエリート層が意識的に協力することでコンフリクトを抑制する「多極共存型社会」
- 途上国における多極共存型社会の模範例だったレバノンの失敗
- 民族紛争の大問題に直面した時のもろさ
- ナショナリズムの3つの類型
- 民族的ナショナリズム:クルド人・タミル人など共通の祖先を根拠にした排他的な民族集団によるナショナリズム
- 社会的ナショナリズム:スコットランド人・ロシア人など社会的なつながりや文化で国を定義するナショナリズム
- 公的ナショナリズム:主権国家によるナショナリズム、愛国主義(Patriotism)
- 主権回復のためのナショナリズムと、主権回復後のナショナリストの新たな戦い
- 多民族社会における国家建設プロセス
- ナショナリズムによる分離の抑制と共通アイデンティティの構築
- 多様性を受け入れるための5種類のアプローチ
- 同化:支配的な集団に対して文化面で従う
- 融合:今までの文化にない新しい文化を作る
- 文化的多元主義:個別文化の保護・平等性の担保
- 適応性多元主義:それぞれのアイデンティティは認めるが共通の文化には従う
- 構造的同化:移民社会は同化するが宗教などは尊重
- ナショナリズムにおける教育と国語の役割
マレーシアにおけるアイデンティティ形成
- マレー人エリート層を活用したイギリスの植民地統治とマレー社会の封建制度強化
- イギリスによる中国人・インド人の移民政策
- 中華系移民の富の蓄積と、マレー系インテリ層の感じた危機感
- 日本の統治下で生まれた民族同士の対立
- マレーシア独立の過程で発展したマレー・ナショナリズムという新しい現象
- マレー系住民の後進性の認識と、中華系・インド系移民への恐怖
- 血のつながりを重視する一般的な華僑とは異なる「海峡華僑」
- 出生地主義
- マラヤ経済に帰属し、マレー系同等の権利を求める
- 行政システムの統一・共通の市民権を付与を目指した「マラヤ連合計画」
- 「マラヤはマレー人の国である」という前提を覆したことに対するマレー人の怒り
- マレー系の権利や特権、市民権といった争点の顕在化
- 「マレー系こそがマラヤの正当な所有者である」とするマハティールの「マレー・ジレンマ」
国家建設から国民意識の形成へ
- 国家建設を進めて国民の融合を果たすうえで最も重要な要素である国語と教育
- マレーシアにおいて30年間も選挙の争点になっていた国語と教育
- マレー式に統一されることに拒否感を示す中華系
- 1996年の教育法で認められた母語教育
- アジア通貨危機後のインドネシアでの民族暴動とマレーシアへの影響
- 民族対立を防ぐ重要な要素は経済成長
- 「均一性ではなく、団結」という非マレー系の主張
- 文化の多様性+社会における共通価値
- 非マレー系にとってマレー文化とイスラム文化
- イスラムを前提とした文化は許容できない
それぞれの国家像
- 民族の政治利用というマレーシアにおける国家形成の最大障害
- ブミプトラと非ブミプトラという2つの立場
- マレー系優遇の国家とイスラム中心の国家という主張の対立
- マレー系優遇を主張する統一マレー人国民組織(UMNO)
- 全マレーシア・イスラム党(PAS)
- 元来地域共同体への帰属意識(バンサ・ムラユ)が強く統一マレー国家建設は困難
- マハティールが推進したイスラム化計画
- マレー・ナショナリズムの新たな解釈
- ライバル政党PASよりも穏健で進歩的なイスラム解釈というスタンス
- PASはマレー文化とイスラムは切り離せないというスタンス
- マハティールの「2020年構想」で示された地域から国家統一(バンサ・ムラユからバンサ・マレーシア)へのシフト
- ボルネオのブミプトラ主義が提起した問題
- 地域の個別民族主義という課題
- 民族アイデンティティの否定・マレー系イスラムの押しつけに対する民族ナショナリズム
国家像に関する論争
- マレーシアにおける現地の風習を受け入れた海峡華人・プラナカン華人と、純粋な中国人
- マレー系の政治的・文化的支配に適応した非マレー系
- イスラム教だけは別物であり受容は困難
- 中華系が自身の言語・文化・アイデンティティを守れている要因
- 対立を望まないマレー系による配慮と中華系の経済的優位性
- 中華系にとってはアイデンティティを守るための教育と国語が重要
- 中華系とは対照的なインド系
- 経済・教育による進歩がインド系の主題
バンサ・マレーシアの形成
- マハティール率いる国民戦線(BN)が変えた都市部中華系有権者の投票行動
- 中華系からの支持と民主行動党(DAP)の牙城の奪取
- 社会経済的不平等の是正
- 文化的多元主義の遵守
- バンサ・マレーシアの3条件
- 国への帰属意識
- マレーシア語の使用
- 憲法の受容(マレー系の価値観・マレー人の優遇の受容)
- 建国途上の国民としてのバンサ・マレーシア
- 地方と都市・民族内部・民族間・階級間を統合する文化的な社会
- 国家のアイデンティティの確立と国民的統合の達成
- 「多元的な社会と1つの国民」というバンサ・マレーシアのゴール
- バンサ・マレーシアにおけるナショナリズムの必要性
- マハティール政権後期における「ブミプトラ政策」「民族主義的政策」のトーンダウン
- 「自由化」とその果てにある民族間の分断を懸念する一部マレー系からの批判
- マレー・ナショナリズムと文化多元主義の均衡というバンサ・マレーシアの難しさ
マハティール主義と国家の未来
- 過激なマレー民族主義者マハティールが多民族国家マレーシアに与えた影響
- マレー・ナショナリズムの矛先を中華系ではなく欧米に転嫁するやり口
- マレー系中間層の台頭
- 2020年構想とともに発表された新開発政策(NDP)
- それまでの新経済政策(NEP)で改善されたマレー系の経済水準をさらに引き上げる政策
- マハティールの強権政治に反対した副相アンワルの罷免
- 反マハティール運動としてのリフォルマシ(改革)運動の激化
- 汚職・縁故主義・身内優先主義という批判
- 非マレー系の表が必要という政治的事情によるマハティール主義のゆりもどし
- 国家としてのマレーシアはいまだ民族意識を根本とした段階
- 歴史観や文化・宗教的寛容さの共有意識が絶えずつくりだされている段階
- 文化的慣行の均質化もいまだ進行中
バンサ・マレーシアのゆくえ
- いまだ人々にとって曖昧なバンサ・マレーシアの概念
- 民族的に分断された社会における民族とナショナリズム
- 民族的アイデンティティの強い感情的引力と持続性
- 民族的自覚の現れと直接的に関係する文化的特質
- 多極共存型民主主義における未解決の欠点
- 妥協・折衷の失敗
- 支配層の継続的支持獲得の失敗
- 過激派・急進派による体制維持の危機
- マレーシアにおける国家建設のための政治の特徴
- アイデンティティを仲裁するための政治
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