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『実践 金融データサイエンス 隠れた構造をあぶり出す6つのアプローチ』 ☆3

MUFGのシンクタンクによる金融領域におけるビッグデータ活用の事例集。主に文章解析技術であるテキストマイニングを使った分析が紹介されています。具体例が多く、ビッグデータ分析のヒントを得られるかもしれません。


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金融領域におけるビッグデータ分析のサンプル

株式運用

株式投資をやっている方には常識なのでしょうが、株価に影響する要素としてファンダメンタルズ・テクニカル・センチメント・アノマリーの4種類があります。

ファンダメンタルズ

各種の経済基礎指標です。GDPなどのマクロ的なものから、企業や家計の経済状態のようなミクロな指標まで幅広いです。指標であるため、定量的でありビッグデータ分析に適しています。例えば、米国市場の前日終値と、日本市場の始値に0.7~0.8の相関(かなり強い関連性)が紹介されています。

テクニカル

株に関連する指標です。株価の移動平均や、株価と売買高を組み合わせたRSI (Relative Strength Index)・VR (Volume Ratio)など目的に合わせて様々な指標があります。こちらも定量的なので分析に向いています

センチメント

投資家心理です。「皆が買っているから買おう」のような市場心理が株価に影響するケースであり、バブルはセンチメントによって引き起こされるのです。経済学的には、基礎情報であるファンダメンタルズが変わっていないのに、株価が急騰するのをバブルと呼ぶようです。

アノマリー

株式取引にまつわる法則・経験則のようなものです。例えば、「売り時は5月(Sell in May)」という経験則について、実際のデータ・リターンはどうだったかの検証が行われています。

市場情報を活用したAIによる株式運用は既に各社でサービス化されていますが、異なるAIであっても売買する条件・ロジックが似通っているとちょっとした市場の変化にAIトレーダーがいっせいに反応して株価の急騰や急落が起こるリスクも高いのです。

企業間ネットワーク

取引関係などで企業間のつながりを可視化しようという取り組みです。例えば、トヨタとデンソーのような取引関係が広く認知されている企業の株価は、お互いに強く関係します。一方で、認知度が低い企業間の株価はすぐに連動せずラグが生じ、取引関係の認知度が高まると徐々に連動していくことが示されています。

ESG評価

ここ数年でメジャーになったESG経営(Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の頭文字)について、テキストマイニングを使った各社の本気度測定が紹介されています。具体的には各社のCSRレポートをインプットに、出てくる単語をツリー構造化したり、単語間の距離(共起性)をベクトル表現してみたり(関連性の高い単語ほどベクトル成分は近似する)する手法が紹介されています。テキストマイニングの具体的な活用事例として興味深いのです。

決算短信評価

ESG評価で使ったテキストマイニングを決算短信の評価にも使ってみようという試みです。文中に使われている動詞(述語)がポジティブかネガティブかを判定します。ただし、「売上が増えた」はポジティブですが、「コストが増えた」はネガティブなので、動詞だけでなく名詞(主語)と組み合わせて評価するのがポイントなのです。決算短信の全文を評価し、総和としてポジティブなのかネガティブなのかを算出することでその企業が好況なのか不況なのかを判定します。

文章で書くととてもシンプルに見えますが、実際は名詞・動詞のポジティブ・ネガティブのデータ登録だったり、様々なモデルを組んだりと泥臭い作業が多いことが紹介されています。

マクロ経済分析

33種類の経済指標を基に直近のGDP・インフレ率・政策金利を予測する「ナウキャスティングモデル」が紹介されています。独立性の高い指標を取り入れるほど予測精度は上がることが示されるなど、システム屋としてはとても興味深いのです。従来のマクロ経済分析は企業や家計などの様々な経済集団をひとくくりにし、ある経済政策が平均的な企業・家計に与える影響を評価していたのですが、ビッグデータを活用することで所得別の影響評価などより粒度の細かい単位での分析が簡単にできるようになってきたことが示されています。

高頻度情報から読む取引行動

アマゾン・楽天のようなEコマース企業と銀行が持つ顧客情報における決定的な違いは、顧客企業の個々の取引情報を持っているか否かです。Eコマース企業は顧客企業の決済の代行をすることで、日々の売上など即時性の高いデータを大量に保有しています。そのため、顧客企業の取引状況を見て、トランザクションレンディングと呼ばれる迅速な資金提供を行うことができます。モノの流れ(商流)とお金の流れ(金流)を把握しているEコマース企業ならではのサービスです。

一方で、銀行は個々の取引情報を把握できていないので、財務諸表のような定点のスナップショットや不動産を担保とした融資審査を伝統的に行ってきました。最近では倉庫にある在庫情報などを活用した動産担保融資(Asset Based Lending)が一般化してきましたが、ビッグデータという観点ではEDI(Electronic Data Interchange)を活用した商流の把握が有効なのだろうと思います。EDIとは、企業間で売掛債権・買掛債権を自動的に消しこむ仕組みのことで受注・発注データに付与され、標準的なフォーマットが規定されています。企業間の決済は銀行を経由するので、銀行がEDI情報をビッグデータ分析することで様々な情報を得ることができます。例えば、買掛債権の支払と売上債権の回収を比較することで顧客企業が好況か不況かが分かります。さらに、決済先との取引頻度・金額を把握することで企業間ネットワークを把握することができます。顧客企業が好況の場合、その取引先(例えばサプライヤー)にも資金調達ニーズがあると想定されるため、新たな顧客開拓が見込めたりします。

これまで解析されなかった有象無象のデータは宝の山かもしれないのです。

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ベストビュー(過去1カ月)

『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々 - City of Darkness』 ☆4

魔窟とも言われた香港の九龍城の住人へのインタビューや、在りし日の写真集。香港の本土返還に伴い取り壊されてしまっているけど、その怪しさに妙に惹かれるのです。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編)【Day 4:卒業式】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。4 日目は卒業式本番です。とても賑やかでアメリカンな式典でした。ただしあいにくの雨、僕曇り男なのに。。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day2:晩餐会】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。 2日目は午前中はボストン観光、夕方から Hooding ceremonyという卒業生(大学院生)向けの晩餐会です。卒業式で被るHoodをもらいました。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day0:渡米前にやっておくこと】

UMASS Lowellの卒業式@Bostonについて、計画の立て方やら行く前にやっておくことやらをまとめておきます。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day3:終日観光】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。3 日目は終日フリーなので、ゆっくりボストンを観光しました。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day5:帰国】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。5 日目にして帰国なのです。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day1:ボストンへ】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。 1日目は移動だけで終わりました。

『女たちの王国 「結婚のない母系社会」中国秘境のモソ人と暮らす』☆3

雲南省と四川省の境にある「世界で最後の母系社会を営むモソ族」の社会に入り込んだ中華系シンガポール人女性の手記。結婚という概念がない・一夫一妻制でもないなど、父系社会が当たり前の我々にはイメージしづらい世界ですが、命をはぐくむ女性を中心とした母系社会のほうが生物としては正しい在り方なのかもしれません。

【番外編】AI(機械学習)やってみた。【第3回】ソムリAI ~ニューラルネットワーク編~

AI(機械学習)やってみた、第3弾です。「ニューラルネットワーク(Neural Network)」を使ったソムリAIを作ってみようと思います。”ニューラルネットワーク”、見るからにAIっぽい名前ですよね。

『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』 ☆5

一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施している「Deep Learning for GENERAL (通称G検定 ) 」 の公式テキスト 。 ディープラーニングについて1冊で網羅的によくまとめられているので 、 ディープラーニングの入門書としてもおすすめです 。 ついでに勢いで資格も取ってしまいました 。 AI人材への第一歩なのです 笑

ベストビュー(全期間)

Malaysia Quarantine Premium Package 【番外編】Malaysia赴任記 隔離ホテル情報

Once entering Malaysia, we need to be quarantined for 14days. At the beginning of COVID-19 spread, the hotel for quarantine have been determined randomly. In these days, we can choose "premium quarantine stay package" in advance . This article is summary of premium packages which I asked each hotel. Note: Information in this article might be old. It's better to confirm the latest plan to the hotel. Note: Only Hotel Istana can be booked via its homepage so far. As the other hotels don't show their premium package plans on their homepage, you need to contact them through their reservation E-mail address or "Contact us". マレーシア入国とともに14日間ホテルで隔離されます。当初は滞在ホテルがランダムに割り振られていたようですが、より快適なプレミアムプランが追加されました。各ホテルにどんなプランがあるのか聞いてみたので、聞いた内容をまとめます。 ※情報が古い可能性があるので、念のため最新情報を各ホテルに確認したほうがよいかもしれません。

【番外編】AI(機械学習)やってみた。【第1回】ソムリAI ~決定木編~

最近ブームのAI(機械学習)に手を出しました。まずは、決定木(Decision Tree)というモデルを使って「ソムリAI(ワインソムリエAI)」を作ってみようと思います。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day0:渡米前にやっておくこと】

UMASS Lowellの卒業式@Bostonについて、計画の立て方やら行く前にやっておくことやらをまとめておきます。

【番外編】AI(機械学習)やってみた。【第6回】乳がん診断AI その1

ソムリAI(ワインソムリエAI)で使った手法で乳がん診断AIを作ってみます。まずは決定木とニューラルネットワークの2つのモデルを試してみます。かなり高性能なモデルができました。名医誕生かもしれません 笑

【番外編】AI(機械学習)やってみた。【第3回】ソムリAI ~ニューラルネットワーク編~

AI(機械学習)やってみた、第3弾です。「ニューラルネットワーク(Neural Network)」を使ったソムリAIを作ってみようと思います。”ニューラルネットワーク”、見るからにAIっぽい名前ですよね。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day5:帰国】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。5 日目にして帰国なのです。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編)【Day 4:卒業式】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。4 日目は卒業式本番です。とても賑やかでアメリカンな式典でした。ただしあいにくの雨、僕曇り男なのに。。

【番外編】AI(機械学習)やってみた。【第2回】ソムリAI ~ロジスティック回帰編~

AI(機械学習)やってみた、第2弾です。前回は決定木(Decision Tree)を使ったソムリAI(ワインソムリエAI)を作りました。今回は「ロジスティック回帰(Logistic Regression)」というモデルを使ったソムリAIを作ってみようと思います。

【番外編】ボストン旅行記(UMASS Lowell卒業式編) 【Day2:晩餐会】

UMASS Lowellの卒業式@Boston。 2日目は午前中はボストン観光、夕方から Hooding ceremonyという卒業生(大学院生)向けの晩餐会です。卒業式で被るHoodをもらいました。

『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』 ☆5

一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施している「Deep Learning for GENERAL (通称G検定 ) 」 の公式テキスト 。 ディープラーニングについて1冊で網羅的によくまとめられているので 、 ディープラーニングの入門書としてもおすすめです 。 ついでに勢いで資格も取ってしまいました 。 AI人材への第一歩なのです 笑